ジッカ

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3ヶ月ごとに薬をもらっている病院へ行くため、実家に帰った。

祖父母の老いが進んでいるなぁと感じる。祖母はだんだん子どもみたいになっていて、陽気な感じなのだが、祖父は始終苛立っているように見える。自分の目が見えなくなってきたのは誰それのせいだ、などと支離滅裂なことを言う。自分以外の家族が喋っていると無視されていると感じるのか、ドアをバタンと閉めたり電気を唐突に消したりする。

もちろん認知症ということもあるだろうけど、怒りや不機嫌という形でしか自分の中の何かを人に伝えられないほど孤独なのかと思うととても悲しくなる。

河合隼雄の「家族関係を考える」という少し昔の本で、人は家族を、自分を中心とした心の円として捉えていて、嫁姑問題がしばしば起きるのは、嫁も姑も自分の円の中に夫(息子)を入れているけど夫の母(息子の妻)は入れていないから、というような記述があった。それぞれが、家族のメンバー全員を自分の円の中にしっかりと包んでいる状態が、理想的な状況なのだと思う。私の家には家族のメンバー全員が入ることのできる大きな円は存在していない。

昔は実家に帰ると呑気にダラダラしていたけど、最近は実家に帰ると色々なことを考えてしまってほとんど眠ることができない。ひとり暮らしの部屋に帰ると心底ほっとしてしまう。わたしはまだみんなを囲めるような円を持っていない。2日いて、トイレや風呂の排水溝を掃除したり、病院の帰りにたこ焼きを買ってくるくらいしかできなかった。「このたこ焼き屋さん覚えてる?」と祖母に聞くと「うん、なんか見覚えあると思った!懐かしい〜」と言っていた。

ほんとに覚えてる?と思ったけどこのたこ焼きは家族みんなが好きだ。