しあわせの比喩は難しい
5年ぶりくらいに会う後輩の女の子は髪の毛が伸びていた。
彼女は私が出会った人の中でとびぬけて比喩にオリジナリティがあっておもしろい。「原付で走りだす瞬間は、魔女の宅急便の冒頭で、キキがほうきに乗るときの感じと似てる」とか「同棲は終わらない免許合宿って感じ」とか。
彼女から教わったことの一つは、ここぞという時には一張羅を着ること。
今日も「××さんに会うからこの服を選んできたんですよ!」と言ってくれた。
自分のためにめかしこんでくれるってかなりうれしいし、それを言ってくれるのもうれしい。
彼女は比喩がうまいので、「しあわせ」にもイメージを持っている。
親が共働きだった彼女は、小学校から帰ってくると、毎日となりの家に住む同い年の男の子の家に行って、2階の部屋で、お菓子を食べながらゲーム(マリオカートとか)をやっていたそうだ。そのときに「明日も明後日も、永遠にこの時間が続けばいいなあ」って思っていたらしい。
そういう、「おわらない時間」のイメージが彼女にとっての「しあわせ」なのだそうだ。彼女にとって家族をつくることは、そんな時間をつくることなのだと言っていた。
よしもとばななの「デッドエンドの思い出」っていう小説にも、男女がお互いの「しあわせ」のイメージについて話し合うシーンがあった。主人公は、ドラえもんとのび太が同じ空間でどら焼き食べたりマンガ読んだりしているところを挙げてて、男のほうは「どこにでも行けるけどどこに行かなくてもいい、自由な感じ」みたいなことを言ってた気がする。
じゃあ自分はどういう「感じ」をしあわせな感じと感じているか?と考えたがイメージが出てこなかった。「happy」なら色々浮かぶんだけど…「しあわせ」となると難しくないですか?